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日本のScotland

天気予報通り朝から雨が降っている。風も相当きつそうだ。ただ、雨粒は細かくScotlandの雨のようにも見える。

バス停にある余市蒸留所の広告朝食後、10時のバスで余市に向かう。小樽からは列車でも行けるけど、単線非電化区間で1時間に1本程度しかないので不便だ。列車の旅もいいのだけれど。

北の海途中から道路は海岸線を通る。荒れる北の海が姿を現した。約30分で余市に到着。その頃には雨もほとんど上がっていた。少し青空も見えてきた。

メインゲートバス停の目前が蒸留所の入り口だ。建物自体が壁になっている町中の蒸留所で建物の雰囲気もCampbeltownの蒸留所に似ている。

正門の中の受付で申込をする。余市蒸留所は30分ごとに出発するガイドツアーと自由に見学できるフリーツアーを選択できる。私はゆっくりと写真が撮りたいのでフリーツアーにした。しかし一度ガイドしてもらってから写真を撮ったほうがよかったかなとも思った。

モルトキルンゲートをくぐるとまず目に飛び込んできたのが独特の形をした、モルトキルンだ。Scotlandでもこんな形のものはない。ひょっとして昔のCampbeltownにあったのだろうか。

スティルハウススティルハウスには石炭直火焚きのスティルが8基ある。石炭で加熱するポットスティルはScotlandにも少ないのではないだろうか。直火でもコンピュータ制御ができるガスが多く使われる。

ポットスティル山崎よりは小型のスティルでScotlandによくあるサイズに近いと思う。すべてストレート型というのはCampbeltownと蒸留所と同じだ。

1号ウェアハウス見学できる1号ウェアハウスは現在使用されていないようだ。サイズもとても小さい。歴史を感じさせる建物だ。

Scotlandのような空それにしても余市の天候はScotlandによく似ている。強い風、細かい雨、灰色の雲の向こうには青空と白い雲が少しだけ見える。
日が差したかと思えばすぐ曇って、雪混じりの細かい雨が強い風に乗って舞う。

余市のメインバーしかしこういう気候だからこそウィスキーがおいしい。さっそくBarへ行こう。
余市のBar(有料試飲コーナー)はウィスキー博物館の中にある。ウィスキー博物館はウィスキーの歴史や作り方、そしてScotland関連のコーナーもあり非常におもしろい。しかし私としてはやはりBarが気になる。

原酒販売所余市蒸留所では何種類かの蒸留所限定シングルカスクタイプの余市モルトを買うことが出来る。もちろんBarでも飲める。さすがに全種類買って帰るのは無理だ。さて、どれにしようか。香りを確認するためのグラスが並べられているがどれがいいのか迷ってしまう。とりあえず一通り飲むとしよう。

4種類のキーモルト原酒まず、10年原酒を試飲する。やはり現地で飲む酒は格別なものがある。原酒は未貯蔵から25年まで5年間隔の熟成年数のものと12年で風味の違う4種類("Peaty & Salty"、"Sherry & Sweet"、"Woody & Vanillic"、"Fruity & Rich")が販売されている。10年原酒と15年原酒とでは樽が違うなど、なかなかのこだわりを持ったラインナップだ。

Yoichi 12 years old Woody & Vanillic続いて12年の4種類を注文する。Barでは樽から入れてくれるのもうれしい。"Woody & Vanillic"の香りが一番お気に入りかな。"Peaty & Salty"はちょっと個性が強すぎる。ブレンドにはいいかも知れないが。

Yoichi 20 years old Cask Strength次に15年原酒と20年原酒を飲み比べ。15年はシェリー樽、20年はバーボン樽と芸が細かい。しかし甲乙つけがたい。さて、どれを買って帰ろうか。しかし調子に乗って7杯も飲んだ後、どういう行動に出るかある程度想像が出来た。で結局\32,600の出費となりました。

最後にBarに戻って25年原酒を注文する。やはり酒はその土地に行って飲むのがおいしい。日本のWhiskyも例外ではなかった。
いろいろなモルトを飲むうちに、ふと竹鶴政孝氏は余市にCampbeltownを目指したのではないだろうかと思った。以前から余市のモルトの独特のピートフレーバーを不思議に思っていた。Islay Maltほど強烈ではないにしろ、日本人の好む味なのだろうかと。しかし余市の気候、蒸留所の雰囲気などを肌で感じると、今年の4月に訪れたCampbeltownを思い出さずにはいられない。

竹鶴氏は1920年にCampbeltownのHazelburn蒸留所でウィスキー造りを学んでいる。そして1923年に山崎蒸留所をオープンの後、1925年に再度、Campbeltownを訪れている。あれほどの栄華を誇ったCampbeltownはほとんどの蒸留所は1925年までに閉鎖されている。Hazelburnも氏が訪れた後、閉鎖された。その状況を実際に目にして、氏の胸中はどうだったのだろうか。
まぁ、これは勝手な想像に過ぎないが私の中ではウィスキーのロマンの一つとなるだろう。

特製ウィスキーアイスクリームさてとそろそろ帰るとしよう。ウィスキー博物館の外に出ると雪が舞っていた。しかしウィスキーを飲んだ後では心地よい。受付近くの見学者待合室の売店に寄るとウィスキーアイスクリームを売っていた。これは食べなければならない。その味はと言うと、かすかにウィスキーの味がするかな?と言う感じだったけど。

14:05のバスで小樽へ向かう。また、来るとしよう。ウィスキーの故郷はいいところだ。
小樽到着後、少し時間があったのでおみやげを買いに昨日の魚屋に行っていたら思わぬ時間を食ってしまった。昨日は気づかなかったが駅からはちょっと離れている上にカメラ+ウィスキーで更に重たくなった荷物・・・。
ぎりぎりで15:04発の快速に間に合った。座席は満席状態。加えて暖房が効いていて暑い。この時期にここまで入れんでもええと思うが。
途中、海岸線では北の荒波が列車を洗う。なかなかの迫力だ。

列車は予定通り新千歳空港に到着した。慌しかった2日間の旅もそろそろ終わりだ。
飛行機に乗り込む頃には雪が降り出した。翼の上では除雪作業も行われている。北海道の冬はすぐそこまでやって来ている。

さて、次はどこへ行こうか。日本の蒸留所をすべて廻るというのもいいかも知れない。よし、今度は3月初めのバースデー割引あたりに行くとしよう。
JAL2012は雪の降る千歳を飛び立った。私の新たなるウィスキーの旅の計画とずっしりと重たくなった荷物と共に。